国内の車両系建設機械の全台数のうち、コンクリートポンプ車の占める割合は10%未満と少ない機会ですが、コンクリートポンプ車での作業による死亡災害は、1998年~2017年の20年間で27件発生しており、死亡災害発生率は、他の車両系建設機械の約3倍といわれています。
コンクリートポンプ車による圧送工事は、ひとたび事故が発生すれば重大災害に至る危険性を含んでいるといえます。
全圧連では、コンクリート圧送工事に係る労働災害を防止するため、入手した事故情報を都度会員へ配信するとともに、定期的に事故事例集を作成し、毎年全国各地で開催する「全圧連 全国統一安全・技術講習会」等において事故事例研修を行い、会員企業の圧送工への安全教育を徹底しています。
コンクリート圧送工事における主な事故事例
1)コンクリート輸送管・ホース類の破裂
コンクリート圧送工事で最も発生頻度が高い事故が、コンクリート輸送管やホースの破裂によるものです。
《原因》
- 輸送管やホースの磨耗・劣化
- 圧送中の閉塞による急激な高負荷
- 生コンクリートへの異物・大粒径骨材の混入による急激な高負荷
- コンクリートポンプの吐出量を上げ過ぎることによる高負荷
破裂により、高圧で圧送されていた生コンクリートが一気に噴き出し飛散したり、輸送管ごと飛びはね・落下するなどにより、物損・人身事故に至る危険性があるとともに、打設工事が中断することでコールドジョイントの発生など、構造物の品質へ大きな影響を及ぼす可能性があります。
《対策》
- 輸送管・ホース類の日常点検と早期の交換
- 打込み・締固め作業と連携した無理のない吐出量による安全な圧送・配分作業
- ブーム圧送作業における落下防止装置の確実な装着
2)圧気による暴発
圧送中の輸送管内の生コンクリートは、コンクリートポンプによる機械的圧力で押し運ばれており、輸送管内部の空気には常に高い圧力がかかってます。この圧気は、圧送を中断した後もしばらくの間輸送管内に留まっています。
《事故事例》
- 圧送中に閉塞したため、解除しようとして、高い圧気が残ったままの閉塞箇所の輸送管を一気に外し、噴き出した生コンクリートが激突し被災。また、圧気で飛び上った輸送管が激突し被災。
- 長距離配管に残ったコンクリートをエアコンプレッサにより空気圧で洗浄中、輸送管先端部より飛び出した洗浄クリーナが激突し被災。また、反動で跳ね上がった輸送管に激突し被災。
- 前日作業した輸送管の中に洗浄クリーナが入ったままであるのに気がつかず、圧送作業を開始し、輸送管先端部より飛び出した洗浄クリーナが激突し被災。
《対策》
- 閉塞解除の際は、閉塞箇所の輸送管のジョイント(継手)部を一気に外さず、徐々にゆるめ、モルタル分の噴き出しや圧気の抜ける音が収まるのを待ってから輸送管を外し、解除作業を行う。
- 長距離配管などで空気洗浄を行う場合は、長い距離を一気に洗浄せず、洗浄クリーナの進行を短い距離でこまめにエアコンプレッサを停止させ、圧気を抜いて輸送管を短く分断しながら行う(空気洗浄は圧送工の技術・熟練度を要するため、水洗浄が望ましい)。
- 輸送管の洗浄作業の際は、先端ホースを外し、先端部にクリーナ受けを取り付ける。
- 輸送管の振れや脱落防止のための固定措置を講じる。
3)墜落
建設業における死亡災害発生状況で最も多いものが墜落です。
コンクリート圧送工事においては、足場の不備によるものが多く、 打設足場や作業床の設置がない現場で、無理に作業を行うことによる不安全作業や事故が依然として報告されています。
コンクリート圧送工事においては、足場の不備によるものが多く、 打設足場や作業床の設置がない現場で、無理に作業を行うことによる不安全作業や事故が依然として報告されています。
《対策》
- 施工前の現場との事前打合せ、作業当日は現場にて作業床・打設足場の設置を必ず確認・依頼する。
- 安全帯を確実に使用する。
- 足場や作業床を使用する場合は、その日の作業を開始する前に、作業を行う足場や作業床の異常の有無、手すり等の取りはずしや脱落の有無等を点検し、異常を認めたときはただちに補修する。また足場の一部解体・変更を行った場合も同様に点検等を行い、異常を認めたときはただちに補修する(これらの点検を行ったときは、点検結果等を記録し、足場を使用する作業を行う仕事が終了するまでの間保管する)。
4)コンクリートポンプ車の転倒
コンクリート圧送工事は近年、ブームを使用して行う作業形態が多く、国内で稼働するコンクリートポンプ車の約95%はブーム車となっています。
特に近年、仮設コストの削減、作業範囲の広域化、作業時間の短縮化などに応えるロングブーム化が進み、国産機種では36m、海外では60mを超えるブーム車も活躍しています。
しかしその反面、わが国の現場ではポンプ車の設置場所が限定されるケースが多く、安定性が低下し転倒する事故も問題となっています。
特に近年、仮設コストの削減、作業範囲の広域化、作業時間の短縮化などに応えるロングブーム化が進み、国産機種では36m、海外では60mを超えるブーム車も活躍しています。
しかしその反面、わが国の現場ではポンプ車の設置場所が限定されるケースが多く、安定性が低下し転倒する事故も問題となっています。
《事故事例》
- 転倒防止のためのアウトリガを完全に張り出せるスペースがない道路上でポンプ車を設置し、圧送作業中に転倒。
- 前下がりの傾斜地にポンプ車を設置し、前方へブームを伸ばし圧送中、ホッパ内の生コンクリートが空になった途端に転倒。
- 舗装されていない土の地面で、敷鉄板などの養生を施さずにポンプ車を設置し、圧送作業中にアウトリガが埋没し転倒。
《対策》
- アウトリガは常に両側を最大に張り出し、アウトリガジャッキは受盤木を敷いて完全に設置させる。
- ポンプ車は水平な場所に設置する。やむを得ず傾斜地に設置する場合は、ポンプ車の傾きが前後左右いずれの方向にも水平になるように、アウトリガで調整し、水準器で確認する。タイヤに車止めを確実に付け、浮き上がったタイヤの下には板や鉄板を敷き養生する。
- 乗入構台やコンクリート舗装などの強固な地盤以外では、安全を考慮して敷鉄板で地面の養生・補強をしてポンプ車を設置する。
5)生コンクリートを受けるホッパ(かくはん装置)への巻き込まれ
コンクリートポンプ車後部にある、生コン車から生コンクリートを受け、アジテータ(かくはん羽根)でかき混ぜるかくはん装置をホッパといいます。
ホッパには生コンクリー トへの異物混入や、人が巻き込まれる事故を防ぐための格子状のスクリーンが設けられていますが、ホッパ内のアジテータに巻き込まれ被災する事故は過去多く発生しています。
ホッパには生コンクリー トへの異物混入や、人が巻き込まれる事故を防ぐための格子状のスクリーンが設けられていますが、ホッパ内のアジテータに巻き込まれ被災する事故は過去多く発生しています。
《事故事例》
- 土木配合で、生コンクリートがスクリーンからホッパ内に落ちにくかったため、スクリーンを開けたまま圧送工がホッパ脇に立ち圧送作業中、誤って足をホッパ内に落とし、アジテータに巻き込まれ被災。
- アジテータ(かくはん羽根)を回しながらホッパ内の残コンクリートを洗浄作業中、作業服の袖がアジテータにからまり、腕が巻き込まれ被災。
《対策》
- スクリーンを開けて生コンクリートを受け、開けたまま圧送作業を行わない。
- スクリーン上での作業を行わない。
- ホッパ内の洗浄作業は、必ずアジテータを止めた状態で行う。
※JIS A 8612に基づき、平成17年以降に販売されたポンプ車より、スクリーンが開くと同時にアジテータ・ポンプの作動が停止するロック装置が義務付けられています。
6)送・配電線付近でのブーム操作による感電
送・配電線が付近にある現場でブーム車で圧送作業を行う場合は、ブーム操作時の感電事故防止に最大限の注意が必要です。
感電事故は当事者が被災することはもちろん、周辺地域の停電事故など重大な事故につながる危険性があります。
電圧の高い電線にブームが近づくと、直接電線に接触しなくても火花放電により電気が流れるため、電線とブームとの間に安全な距離を保たなければなりません(安全離隔距離)。
感電事故は当事者が被災することはもちろん、周辺地域の停電事故など重大な事故につながる危険性があります。
電圧の高い電線にブームが近づくと、直接電線に接触しなくても火花放電により電気が流れるため、電線とブームとの間に安全な距離を保たなければなりません(安全離隔距離)。
《対策》
- 安全離隔距離を確認し、遵守する(安全離隔距離は通電電圧・電力会社の地域により異なります)。
- 送・配電線付近でのブーム作業となる現場には、事前打合せにおいて、電線への絶縁防護具の装着や、危険防止のための囲いの設置、監視人の設置など、感電防止対策を要請し確認すること。
7)ブーム折損
ブーム折損は発生頻度の低い事故ですが、平成15年に1件、平成16年に1件、平成20年に2件のブーム折損による負傷・死亡事故が発生し、厚生労働省労働基準局から全圧連に対して「コンクリートポンプ車による労働災害の防止について」の通達が計4回発せられており、点検・検査の一層の徹底を求められています。
《事故事例》
- 圧送作業中にブームが折損し、降下してきたブーム先端部が激突し被災。
《対策》
複雑な構造を持つブーム車ですが、長時間の使用による金属疲労で亀裂が発生しやすい部分は、重要点検箇所としてあげられています。この重要点検箇所を日頃から適確に点検することが、ブーム折損などの重大災害を未然に防ぐ最大の防止策になります。
複雑な構造を持つブーム車ですが、長時間の使用による金属疲労で亀裂が発生しやすい部分は、重要点検箇所としてあげられています。この重要点検箇所を日頃から適確に点検することが、ブーム折損などの重大災害を未然に防ぐ最大の防止策になります。
- 日常点検、法定点検(定期自主検査・特定自主検査)におけるブーム点検・検査の徹底。
- グリスの汚れ・サビ等をきれいに清掃し、ブームの重要点検箇所(溶接部、切欠部、補強部の端部、リンク・ピンおよびボス部、引張応力がかかる部分、溶接等で補修された箇所)を目視、作動させた際の異音、探傷器(カラーチェック・超音波)等によりクラックや変形・損傷がないかを点検する。
- 塗装のしわ・割れ・サビ、きしみ音などの異音が出ている箇所は、クラック(亀裂)が発生しているおそれがあるので、塗装を除去して目視で点検するほか、探傷器(カラ ーチェック・超音波)等で点検する。
- 異常を認めたときは、直ちに補修その他必要な措置を講ずる。
- JIS A 8612に基づき、ブーム先端部に接続できるホース類の種類・長さの規定を遵守し、ホースを延長して吊り下げるなどの過負荷作業を行わない。
- JIS A 8612に基づき、ブーム先への延長配管は、床スラブなどの水平方向に限り、ブームへの負荷を軽減させる安全措置を講じる。
- ブーム直下には作業員を立ち入らせない。
- ブームで機材を吊り下げるなどのクレーン作業(用途外使用)を行わない。
8)アウトリガ折損
アウトリガ折損もブーム折損と同様、発生頻度の低い事故ですが、ひとたび発生すれば重大災害となる危険性があります。
《事故事例》
- 圧送作業中にアウトリガが折損し、ポンプ車が転倒。
- 圧送作業中にアウトリガが折損し、降下してきたブーム先端部が激突し被災。
《対策》
アウトリガはブームと同様に、長時間の使用による金属疲労で亀裂が発生しやすい部分は、重要点検箇所としてあげられています。この重要点検箇所を日頃から適確に点検することが、アウトリガ折損などの重大災害を未然に防ぐ最大の防止策になります。
アウトリガはブームと同様に、長時間の使用による金属疲労で亀裂が発生しやすい部分は、重要点検箇所としてあげられています。この重要点検箇所を日頃から適確に点検することが、アウトリガ折損などの重大災害を未然に防ぐ最大の防止策になります。
- 日常点検、法定点検(定期自主検査・特定自主検査)におけるアウトリガ点検・検査の徹底。
- グリスの汚れ・サビ等をきれいに清掃し、アウトリガとビームを最大に伸ばした状態で、アウトリガの重要点検箇所(アウトリガ根元軸受の溶接部、ビームボックスとの溶接部、引張応力がかかる部分、溶接等で補修された箇所)を目視、探傷器(カラーチェック・超音波)等によりクラックや変形・損傷がないかを点検する。
- 異常を認めたときは、直ちに補修その他必要な措置を講ずる。